
Today’s Focusポッドキャスト音声はこちらです。

私たちとテクノロジーとの関係は、「つながる」ことから、思考や判断の一部を「任せる」ことへと広がっています。AIが人間の細かな指示なしに多くの作業をこなすようになるにつれ、その便利さは、私たち自身の主体性について考えるきっかけにもなります。この記事は、私たちが十分に自覚しないまま、何を委ねつつあるのかを問いかけます。
Our relationship with technology is expanding from staying connected to delegating parts of our thinking and decision-making. As AI systems carry out more tasks with less human direction, their convenience raises questions about our own agency. This article asks what we might be handing over without fully realizing it.
Appendix
【Human agency(人間の主体性)】 — Human agency is the capacity to make choices and act on them.
(自分で選び、その選択に基づいて行動する力のことです。この記事では、物事をうのみにせずに考え、自分で判断することも含めて使われています。)
【AI assistant(AIアシスタント)】 — An AI assistant is a system that responds to human requests and helps with tasks such as writing or analyzing information.
(人間からの依頼に応じて、文章の作成や情報の分析などを手伝うシステムです。本文では、依頼を待って動く身近なAIの使い方が、エージェンティックAIを理解するための出発点になっています。)
【Agentic AI(エージェンティックAI)】 — Agentic AI refers to systems that plan steps, make decisions, and carry out tasks toward goals with less human direction at each stage.
(目標に向けて手順を立て、途中の判断や作業を進めるAIです。通常、目標は人間が設定しますが、その達成までの各段階で細かく指示する必要が少なくなります。)
参考動画です。
日本語訳
AIと主体性のジレンマ(前編):つながるために、嗅覚を手放せますか?
15年前、ある国際調査で驚くような結果が報告されました。2011年、マッキャン・ワールドグループは、7か国の16歳から30歳までの7,000人を対象に調査を実施しました。その中で、参加者は「リストにあるものから、二つだけ残せるとしたら」という仮定の選択を求められました。すると、およそ半数が、携帯電話やノートパソコンなどの機器を残せるなら、嗅覚を手放してもよいと答えたのです。デジタルの世界とつながっていることが、人間の基本的な感覚よりも大切なのかもしれない。そんな価値観が、回答からうかがえました。
当時、この結果は、若者たちの暮らしの中でテクノロジーが占める大きな位置を浮き彫りにしました。しかし今、私たちとテクノロジーとの関係は、再び変わりつつあります。何かをするための手助けに使うだけでなく、自分の代わりに考えたり、判断したりすることまで任せられるようになったのです。その関係は、単に「つながる」ことを超え、「任せる」ことへと広がっています。もしAIについて同じような質問をしたら、さらに驚くような答えが返ってくるかもしれません。もっとも、これはあくまで推測です。
AIをめぐる議論で重要になる概念の一つが、「エージェンシー」です。哲学や社会科学では、広く、行動する能力に関わる概念として使われています。この記事でいう人間のエージェンシー、つまり「主体性」とは、物事をうのみにせずに考え、自分で選び、その選択に基づいて行動することを意味します。
私たちに身近なAIアシスタントは、これまで多くの場合、人間からの依頼を待って動いていました。今、テクノロジー業界では「エージェンティックAI」の開発が進んでいます。通常は人間が設定した目標に向けて、手順を立て、判断し、複雑な作業を実行するシステムです。一つひとつの段階で、人間が細かく指示する必要は少なくなります。
AIはすでに、日常のさまざまな作業や判断を支えています。メールの下書きを作り、仕事のデータを分析し、何を見るとよいかを勧めてくれます。その便利さは明らかです。しかし、より多くの選択を任せるようになると、気がかりな疑問が浮かびます。人間による判断はどこまでで、AIによる判断はどこからなのでしょうか。
私たちは今、考えることの一部まで機械に任せられるようになりました。けれど、答えを見つけるための努力や苦労という「摩擦」を、AIが取り除いてくれるとしたら、何が起こるのでしょうか。暮らしが楽になる一方で、自分で考えることは、かえって難しくなるのでしょうか。さらに気がかりなことに、自分がどれほど多くを任せたかに気づかないまま、「すべて自分で決めている」と感じてしまうことさえあるのでしょうか。
このトピックで、さらに英語を鍛えたい方へ
BEPRO PLUS Completeは、英文記事・語彙・理解度チェック・Output Challengeまで含めて学べるメンバーシップ型の学習プログラムです。
BEPRO PLUS Membership についてはこちら

英文テキストのみ購読されたい方へ
ポッドキャストで扱った英文TEXTを使って、読む力を継続的に鍛えたい方には、英文TEXT購読サービスをご用意しています。
ポッドキャスト英文のSmart TEXTについてはこちら
