🌟  The ICC Explained: What It Can—and Can’t—Do ICCとは何か――国際刑事裁判所にできること、できないこと

国際刑事裁判所(ICC)は、重大な国際犯罪の疑いがある個人を捜査・訴追する機関ですが、その権限には法律上、そして実務上の重要な限界があります。管轄権や補完性、各国による協力といった仕組みを理解することで、ICCがなぜ重要である一方、議論の対象にもなっているのかが見えてきます。

The International Criminal Court investigates and prosecutes individuals accused of serious international crimes, but its authority has important legal and practical limits. Understanding concepts such as jurisdiction, complementarity, and state cooperation helps explain both the ICC’s importance and the controversy surrounding its role.

Appendix

【International Criminal Court (ICC)(国際刑事裁判所)】 — A permanent international court that investigates and prosecutes individuals accused of genocide, crimes against humanity, war crimes, and the crime of aggression.
(ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪など、重大な国際犯罪に関与した個人を捜査・訴追する常設の国際裁判所です。この記事の中心となる国際機関です。)

【Rome Statute(ローマ規程)】 — The international treaty that established the ICC and defines its authority, structure, and major crimes under its jurisdiction.
(ICCを設立する根拠となった国際条約で、ICCの権限や仕組み、対象となる犯罪などを定めています。ICCがどこまで事件を扱えるのかを理解するうえで重要です。)

日本語訳

最近のニュースを通じて、ICC(国際刑事裁判所)という名前を初めて耳にした人もいるかもしれません。そのきっかけの一つが、ICC所長を務める日本人判事、赤根智子氏をめぐる報道です。2026年8月、米国は赤根氏に制裁を科し、これを機にICCと国際司法におけるその役割が改めて注目を集めました。この問題をどう見るかは人それぞれですが、まずはICCとはどのような機関で、何ができ、何ができないのかを知っておくことが大切です。

ICCはオランダのハーグに本部を置く常設の国際裁判所です。1998年に採択された「ローマ規程」に基づいて設立され、2002年に活動を開始しました。国家間の法的紛争を主に扱う国際司法裁判所(ICJ)とは異なり、ICCは重大な国際犯罪に関与した疑いのある個人を捜査し、必要な条件が満たされれば訴追します。対象となるのは、ジェノサイド(集団殺害犯罪)、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪などです。2026年8月現在、ローマ規程の締約国は125か国です。日本の外務省によると、日本はICCへの最大の財政拠出国で、2024年時点では分担金全体のおよそ15%を負担していました。

ICCの手続きはどのように進むのか

ICCがある「事態」を扱うことになる経路は、大きく3つあります。ローマ規程の締約国が検察官に事態を付託する場合、国連安全保障理事会が事態を付託する場合、そして検察官が自らの判断で捜査開始を求める場合です。3つ目の場合には、原則として予審裁判部(Pre-Trial Chamber)の許可が必要です。また検察官は、ICCがその案件を扱う管轄権を持っているか、さらに事件として受理するための法的条件を満たしているかも判断しなければなりません。

ICCを理解するうえで重要なのが、「補完性(complementarity)」という原則です。ICCは各国の裁判所に取って代わるための機関ではありません。同じ行為について、その国の司法当局が実際に捜査や訴追を行っているのであれば、原則としてICCで事件が進められることはありません。ICCは、国家が自ら適切な司法手続きを行う意思がない、あるいは実際にそれを行う能力がない場合に、補完的な役割を果たすことを目的としています。

検察官が、必要な基準を満たすだけの証拠があると判断した場合、ICCの裁判官に対して逮捕状の発付や出廷命令を求めることができます。しかし、ICCには大きな制約があります。独自の警察組織を持っていないのです。そのため、容疑者を逮捕し、ICCに引き渡すためには各国の協力に頼らなければなりません。つまり、ICCが逮捕状を出したからといって、実際にその人物が逮捕されるとは限りません。

こうした各国の協力への依存は、ICCが重要な存在である一方、論争の対象にもなっている理由の一つです。支持する側は、各国の司法制度が十分に機能しない場合にICCが「最後の砦」として役割を果たせると考えています。一方、批判する側からは、とりわけローマ規程に加盟していない国の国民が関係する事件について、ICCの権限がどこまで及ぶべきなのかという疑問が示されています。ただしローマ規程のもとでは、犯罪の疑いが締約国の領域内で発生した場合や、国連安全保障理事会が事態を付託した場合など、一定の条件を満たせばICCが管轄権を持つことがあります。こうした仕組みを理解しておくことで、現在のニュースをより正確な文脈の中で捉えることができるでしょう。

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