趣味から学ぶ
昔から僕は、見るだけではなく、自分でもできる趣味を自然と選んできたようです。
たとえばゴルフ。
プロの華麗なショットをテレビで楽しみながら、自分でもクラブを振る。一時期は、好きなプロゴルファーがアドレスに入るまでのルーティンを、そのまま真似していました。
素振りの回数から、ボールを見るタイミングまで。
かなりオタクなアマチュアゴルファーだったと思います。真似をしたからといって、ボールまでプロのように飛んでくれるわけではありませんでしたが。
ジャズピアノも、気がつけば同じです。
好きなピアニストになった「つもり」で弾いています。本人が聴いたら困惑するかもしれませんが、今のところ誰にも大きな迷惑はかけていないと思います。
Who cares?
将棋にも、ひところ随分とはまりました。
盤の前で、プロ棋士が脳に汗をかきながら考えている。その姿が、何とも格好よく見えたのです。

もう一つ、将棋を始めた理由がありました。
当時の僕は、仕事でケアレスミスが多かったのです。メールを送ってから間違いに気づいたり、資料を提出した直後に数字を見直したくなったり。
そこで、次の一手を指す前に一度よく考える、という至極当たり前の習慣を身につけようと思いました。
将棋を始めれば、仕事のミスも減るのではないか。
少し都合のよい発想ですが、趣味には何か理由をつけたくなるものです。
最近、『子供将棋上達法』という本を購読しました。加藤幸男さんの著書です。
タイトルのとおり、子供と両親のために書かれた本なのですが、僕には学習のエッセンスがぎっしり詰まっているように思えました。
その一つが、「習うより慣れろ」です。
将棋の理論を理解することも必要でしょう。でも、盤の前に座って、実際に駒を動かさなければ始まらない。
これは英語も同じなのかもしれません。
文法や単語を学ぶだけでなく、英語で考えてみる。口に出してみる。誰かと会話をしてみる。
加藤さんは、毎日将棋を三局指せば有段者になり、十五局指せば飛び抜ける、といった趣旨のことを書かれていました。
なかなかの局数です。
けれども、実戦をどれだけこなしたかに比例して力が伸びるというのは、机上の理屈ではなく、教室の生徒さんたちが実際に示してきたことだそうです。
もう一つ、心に残ったのが「振り返り」でした。
将棋の対局が終わったら、勝っても、負けても必ず振り返り、検討する。 負けたら「もう一回!」と挑戦したくなりますが、その前にどこに勝因が?敗因があったのか? 振り返ることがとても大切だそうです。
今、BEPRO PLUSの1-minute Output Challengeで、ご自分の英語を録音している方がいます。オープンチャットにも録音データを上げてくださっていて、僕は素直に凄いなあと思っています。
もちろん、録音をしなくても、声に出すだけで違います。
ただ、録音した声を自分で聴いてみると、いろいろなことがわかります。
声量は相手に届く程度に出ているか。発音はクリアか。イントネーションは自然か。途中で急に声が小さくなっていないか。
自分の声を聴くのは、少し恥ずかしいものです。
僕も録音した自分の声を聴くたびに、「この人は誰だろう」と一瞬思います。残念ながら、間違いなく僕です。
昔、五年も六年もギターを習っているのに、なかなか上達しないと悩んでいた人がいました。
先輩に相談すると、その日の練習の最後に演奏を録音、録画して、自分で確認するように言われたそうです。
それを始めてから、信じられないほどのペースで腕が上がったと聞きました。
振り返りには、少々厄介なところがあります。
そもそも面倒です。自分の声や演奏を確認するのは恥ずかしい。そして、本当に効果があるのかと疑いたくもなる。
三拍子そろっています。
それでも、多くの人の経験が、その効果を静かに証明しているようです。
僕自身、二十代の頃、日本語の音読が苦手だと気づき、毎日新聞を声に出して読んでいた時期がありました。
今になって考えると、あの頃の声を録音しておけばよかったと思います。
いや、聴く勇気があるかどうかは別の話ですが。
世の中にあふれるハウツー本を突き詰めていくと、結局、似たところにたどり着くのかもしれません。
始めること。
続けること。
そして、ときどき立ち止まって振り返ること。
PDCAなどと書くと、少し仕事の資料のようになってしまいますが、たぶん基本はそれほど複雑ではないのでしょう。
次の一手を急いで指す前に、盤面をもう一度見る。
録音を止めた後、自分の声を少しだけ聴いてみる。
その小さな面倒を繰り返すことが、いつの間にか上達につながっていくのかもしれません。
そんなことを書きながら、今日の僕も、まずは声を出すところから始めようと思っています。
※ここまで振り返りの効果を偉そうに書きましたが、録音を後回しにしがちな僕自身へのメモでもあります。
※僕ノートなので、ここでは「私」を「僕」で表記しています。お許し下さい。