もう一度、自分のために英語と向き合う
もう一度、自分のために英語と向き合う
考えてみれば、僕はずいぶん長い間、英語と付き合ってきました。
付き合ってきた、というより、時には振り回され、時には助けられ、何とか離れずにここまで来た、というほうが正しいのかもしれません。
海外で働いていた頃、日本人が僕一人だけという職場にいたことがあります。
会議も雑談も、もちろん英語です。仕事の内容を理解するだけでも大変なのに、そこに言葉の問題まで加わる。若かったからできたのか、それとも若かったので大変さがよく分かっていなかったのか。
今となっては、少し曖昧です。
日本に戻ってからも、海外とのやり取りに追われる日々が続きました。
英語は、何か特別な勉強の時間にだけ使うものではなく、仕事を前に進めるための道具でした。うまく使えない日は、仕事そのものもうまく進まない。
なかなか厳しい道具です。
通信社に勤めていた頃、自社のビジネス紙を使った英語学習プログラムを、三井物産さん、そしてオレゴン大学さんと共同で開発しました。
その発想の原点にあったのは、アメリカのビジネスパーソンが、ごく自然にビジネス紙を読んでいる姿でした。
特別な勉強というより、朝のコーヒーと一緒に、その日のニュースに目を通す。世界で何が起きているのかを知り、それを仕事の会話に持ち込んでいく。
日本でも、日経新聞を毎日読む人と、ほとんど読まない人とでは、仕事上の会話に少し違いが出てくることがあります。
使っている言葉は、どちらも日本語です。
それでも、見えている世界や、話題の広がりは同じではありません。
英語も、きっと同じなのではないか。
英語そのものを勉強するだけではなく、英語を使って、世界で今何が起きているのかを知る。そして、海外のビジネスパーソンと同じニュースについて考え、話せるようになる。
そんな考えから生まれたのが、Business English Proでした。
ただ、このプログラムは、当時の日本人ビジネスパーソンにとって、少し難しすぎたところもありました。
作った本人が言うのも何ですが、なかなか手ごわい内容だったのです。
せっかく役に立つ記事があっても、難しさのために途中で離れてしまってはもったいない。この距離を何とか縮められないだろうか。
そんな思いから始めたのが、ポッドキャスト「解説!1日5分ビジネス英語」でした。
スタートしたのは、2013年5月です。
気がつけば、ずいぶん長く続いています。
始めた頃の僕に「これから十年以上続けることになる」と伝えたら、おそらく少し考え込んだと思います。あるいは、聞こえなかったふりをしたかもしれません。
当初、このポッドキャストは、Business English Proを補うための存在でした。
いわば本編を支える脇役です。
ところが、おかげさまで、ポッドキャストを聴いたことをきっかけに、英語学習プログラムを知り、受講してくださる方が少しずつ増えていきました。
いつの間にか、脇役だと思っていたものが、入口になっていたのです。
物事は、計画した通りには進まないことがあります。
ただ、計画とは違う方向に進んだからこそ、見える景色もあるようです。
この十年ほどで、日本人ビジネスパーソンの英語力も、かなり底上げされたように感じています。
英語の記事を読む人も増えました。ポッドキャストや動画を使って、日常的に英語に触れることも、以前ほど特別ではなくなりました。
そして、2026年7月。
今度は、ポッドキャストを起点にした英語学習プログラムを、もう一度組み立ててみたいと思うようになりました。
ただし、今回は少し意味が違います。
誰かに英語を教えるためだけではありません。
僕自身が、もう一度きちんと英語と向き合うためです。
長く英語を使ってきたからといって、英語が完成するわけではありません。
読める記事があっても、知らない言葉は出てきます。話そうとして、うまく表現できないこともあります。以前は自然に使えた言い回しが、なぜか口から出てこない日もある。
英語力の問題なのか、記憶力の問題なのか。最近は、その境目も少し怪しくなってきました。
だからこそ、この「僕自身のための英語訓練ノート」を書いてみようと思います。
どこかで聞いたことがあるような、ないような名前ですが、内容はいたって個人的なものです。
英語を読んで感じたこと。
声に出してみて気づいたこと。
ポッドキャストを収録しながら迷ったこと。
うまくできなかったことも含めて、できるだけ書き残していきたいと思っています。
毎日続けられるかどうかは、分かりません。
日々のポッドキャスト収録もありますし、英語以外のことに気を取られる日もあります。人間ですから、急に机の周りを片づけたくなる日もあります。
それでも、英語と向き合い、試して、迷って、時には少し立ち止まる。
その繰り返しが、僕にとっての英語学習なのだと思います。
英語は、どこかに到着したら終わるものではないのかもしれません。
少なくとも僕にとっては、何度も出発し直すもののようです。
これを読んでくださる皆さんも、それぞれの場所で、それぞれのペースで英語と向き合っているのだと思います。
先を急ぐ日があってもいい。
少し休む日があってもいい。
同じ道を歩く必要もありません。
ただ、ときどきこのノートをのぞきながら、「ああ、この人もまだ格闘しているな」と思っていただけたら、それで十分です。
僕も、もう一度始めます。
今度は、誰かのためだけではなく、僕自身のために。
※これは英語を教える人の完成された記録ではなく、いまだに英語の前で立ち止まることのある僕自身の訓練ノートです。
※「僕ノート」なので、ここでは「私」を「僕」と表記しています。お許しください。
マット竹内